車の免許返納をする目安の平均年齢は?自主返納手続き方法とメリットを解説
2024.04.13 | 更新:2024.11.08
近年の自動車事故では、高齢者による運転ミスが注目されており、免許返納への関心が一段と高まっています。
実際に高齢者が運転する事故で痛ましい交通事故が連日ニュース等で報道され、免許返納への呼びかけも増えています
免許返納を検討している方々の中で、病気や大きな事故を原因とするケースを除けば、65歳以上の方が9割を占めています。特に75歳以上の後期高齢者が、返納割合の半分を占めているのが現状です。
自分では大丈夫と思っていても、高齢になるとどうしても判断能力や運転技術に問題が出ることが多くなってくるのが現状です。
返納を考えている高齢者やその家族も含め、この記事では免許返納をする目安の平均年齢や返納手続きと特典やメリットと注意点を中心に、スムーズに免許を返納できるための情報をまとめてみました。
日本では高齢化に伴い、ドライバーも高齢化しています。その中で、65歳以上の高齢者を中心に、免許を返納すべきいくつかの理由が存在します。
目次
免許を返納すべき目安の年齢は?
免許を返納するような年齢の制限はありません。
その判断は個人に委ねられているため、いくつぐらいの年齢になったら免許返納を検討すべきなのわからない方も多いです。
運転能力や認知能力、身体能力など年齢以外においても自主返納のタイミングはありますが、高齢者に件数が多いのが実情です。
免許自主返納件数の全国年間件数と年齢比率(令和5年)
警察庁の運転免許統計調査によると、令和5年度の自主返納の全国件数は382,957名です。
そのうち65歳以上が全体の約96%を占めており、75歳以上が約70%、80歳以上が約65%となっています。
年齢別にみると、65歳~74歳が約10万人、75歳~79歳が約9万人、80歳以上が約17万人となっています。
こうしてみてみると、自主返納をしている目安の年齢は65歳から検討を始めていることがわかります。
全国規模で最も多い年齢は80歳以上となっているため、80歳までに免許を返納する方と、80歳以上で返納する方はおおよそ半数づつの割合であるため、個々の判断や、生活や仕事に不可欠であるかどうかで決めていると思われます。
神奈川県免許自主返納件数の年間件数と年齢比率(令和5年)
一方神奈川県の自主返納の年間件数と年齢割合は以下となっています。
全国的には80歳以上が最も多い割合でしたが、神奈川県では65歳~74歳が最も多くなっています。
よって都市部においてはこの年齢が自主返納の目安となっていると言えます。
高齢者は運転免許の更新時に高齢者講習が必要
運転免許を更新する際に、高齢者は「高齢者講習」や「認知機能検査」を受講する必要があります。
70歳以上の方は免許証更新時に「高齢者講習」を受講をしなければなりません。
視力や安全な運転に問題がないか実際に車を運転して確認を行います。
75歳以上の方は免許証を更新時に「高齢者講習」と「認知機能検査」を受講しなければなりません。
認知機能検査は、運転に必要な判断能力や認知機能を確認するための検査です。
これからの講習で安全運転に対する自信の認知能力や判断能力や運転操作に関する自分の総合力を図ることができ、それにより自身の判断を含め、免許返納に踏み切る方が増えている要因でもあります。
運転免許を返納しても身分証明書として利用することができる
運転免許を自主返納しても引き続き身分証明書として使用することが可能な証明書が運転経歴証明書です。
更新をせずに免許有効期間が過ぎた方も、返納・失効から5年以内であれば運転経歴証明書の交付を受けることが可能です。
運転経歴証明書の申請は、管轄する警察署や運転免許センターで行います。
運転免許センターや運転免許試験場で申請を行うとし即日発行されますが、管轄の警察署で申請を行う場合には2週間~3週間ほどかかることがあるため余裕を持って申請を行って下さい。
本人が高齢や病気で入院などで申請に行けない場合には、委任状や、本人が来れない理由を証明できるもの(入院・入所の証明書など)があれば代理人が認められていますので代わりに申請を行うことが可能です。
免許の自主返納手続きはどうやって行う?
運転免許が身体的な機能の低下や、不要になった場合には自ら自主的に運転免許を返納することが可能です。
運転免許証を自主返納することが条件とは?
運転免許証を自ら自主返納することが可能な条件とは、運転免許が有効期限内であることが必要です。
免許の有効期間がまだあるうちに計画的に行いましょう。
有効期限が切れてしまっている免許証は自主返納できません。
有効期限が切れている場合は免許証を「返納」するのみとなり、運転経歴証明書を発行できません。
手続きを準備をする前に、免許証の有効期限が切れていないかを確認してください。
運転免許の返納手続きの流れ
1.免許の自主返納に必要なものを事前に用意しておく
免許返納と一緒に身分証明書代わり利用できる運転経歴証明書を申請する場合は以下のものが必要です。
- 申請者本人の運転免許証
- 運転経歴証明書交付申請書(警察署や免許センターに設置されています)
- 印鑑
- 申請用写真(縦3cm×横2.4cmサイズで撮影後6ヶ月以内)
- 交付手数料 1100円
※各管轄地域によって異なる場合があります。
2.警察署か運転免許センターに出向く
運転免許取消申請書を記入し、免許返納と運転経歴証明書に必要なものを提出して申請を行って下さい。
神奈川県内での受付場所と受付時間は下記です。
神奈川県 受付場所 | 受付時間 |
運転免許センター | 月曜日から金曜日(土曜日・日曜日・祝日・休日・年末年始の休日を除く。) 午前8時30分〜11時 午後1時〜3時30分 |
神奈川県内の警察署(横浜水上警察署を除く。) | 月曜日から金曜日(土曜日・日曜日・祝日・休日・年末年始の休日を除く。) 午前9時〜12時 午後1時〜4時 ※ 運転経歴証明書は受付をした警察署で約1か月後に交付されます。 ※ 川崎、横須賀、鎌倉、小田原、海老名、相模原北警察署は混雑が予想されます。 |
免許返納の注意点
運転免許の停止・取消しの行政処分中の方や、停止・取消処分の基準等に該当する方等は、自主返納することができませんので、ご注意ください。
高齢者の運転ミスによる事故が増えている現実
例えば、「近くのスーパーまでだから」と久しぶりに運転した際、アクセルとブレーキを間違えるという事故も報告されています。
またほぼ毎日、車で通っている場所でもふとした瞬間に運転操作ミスによる事故を引き起こすケースも存在します。
若い人では起こりにくい状況でも高齢者になると事故につながってしまうことだってあるのです。
そういったアクシデントの可能性を減らすためにも、免許を返納して運転できない環境を作ることで、自動車事故を防ぐことができます。特に、とっさの判断を求められる運転時には、ミスが生じやすくなります。
毎日運転していない方が、たまにしか運転しない場合、その危険性はより高まります。不慣れな行動に加えて、高齢者の判断能力の低下は危険な事故を引き起こす傾向にあります。
何歳で免許を返納すべきかは、自宅環境とご自身の心身の状態で変わってきます。
1.事故をいつ起こすか不安で家族に迷惑をかけてしまう
運転ミスで事故を起こすと、家族に迷惑をかけます。事故を起こした本人への心配もありますし、物損事故や人身事故で他人に迷惑をかける心配もあります。もし運転している本人が事故でケガをしてしまった場合、家族はとても心配するでしょう。
また、重症の場合、事故によるケガや後遺症の影響で以前のような生活ができなくなる可能性もあります。
その場合、介護やサポートが必要になることもあります。高齢になり、客観的に見た時に免許を返納した方が良いと感じる状況でも、免許を返納しなければ家族が心配することになります。
2.事故は他の人にも多大な損害を与えてしまう
交通事故や物損事故は相手に大きな迷惑と損害を与えてしまいます。
度々、コンビニやお店に車が突っ込むニュースが報道されますが、建物を破壊した際には多額の損害請求が発生しますし、車が突っ込んだ場所にお客様や従業員がいてケガをさせてしまった時は、うっかり運転ミスだけで済まされない状況です。
相手に多大な迷惑をかけてしまう可能性があることを忘れてはいけません。建物や車両の損害や、ケガをさせてしまった場合の賠償や保証に関する費用面もそうですし、相手やその家族に万が一のことがあれば、悔やんでも悔やみきれないでしょう。
3.免許返納になかなか踏み切れない理由
高齢になっても免許返納を考えない、踏み切れないケースが存在します。主に3つの要因があります。
①自分は事故を起こさないから「大丈夫だ」と思っている
高齢者になると判断能力や身体能力は確実に低下していますが、「自分はまだまだ大丈夫。安全運転にも心がけているし、事故を起こさない自信がある」と楽観的に捉えている方が一定数いらっしゃいます。
特に普段から車を運転していた方、もともと運転に自信がある方にこの傾向が見られます。
②自宅周辺環境によっては生活移動の手段がなくなる
「免許を返納した方が良いのかもしれないけれど、車は必要だ」と考える方も多いです。生活の中で車が必要な方は、日用品の買い物や通院、移動手段として車がなくなると実際に不便を感じます。そのため免許返納になかなか踏み切れない方も。
③「まだ乗れる!」というプライドが邪魔をしている
家族から免許返納を促されているものの、「自分を年寄り扱いされるのが嫌だ」と感じる方がいらっしゃいます。高齢になると仕事や生活、身体の健康など、さまざまなものを喪失していく中で、免許返納は自己のアイデンティティを失うと感じられがちです。
免許を返納する4つのメリット
各自治体では、免許返納による特典やメリットを用意しています。国や地方自治体も免許返納の取り組みに積極的です。メリットや特典の内容を知ることで、免許返納に前向きになる方もいらっしゃいます。
1.運転をしなければ自動車事故を未然に防げる
自動車事故の可能性が強制的になくなることは、大きなポイントです。
家族から運転を止められていても、つい運転してしまい、事故を起こすリスクがあります。
「ダメだとわかっていても、ちょっとなら運転しても大丈夫だろう」という誘惑を環境的に排除できる点は、メリットです。
2.免許返納により様々な特典がもらえる
運転免許の自主返納をすると、さまざまな特典が受けられます。
交通機関(バス・タクシー・電車)の割引や優待のほか、あまり知られていないですが、多くの企業や銀行、医療や法律関係でも運転免許の自主返納をサポートしています。
【主な特典の具体例】
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サポート内容はお住まいの地域によって変わります。本当に多くの種類の特典があります。
詳細は警視庁のホームページでご確認ください。
参考サイト
警視庁:高齢者運転免許自主返納サポート協議会からのお知らせ
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/koreisha/shomeisho/support.html
3.車を手放すことで経済的な負担が軽減する
車の維持費用が必要なくなります。車種や駐車場代、保険の内容によって変わりますが、年間で数十万円の経費が免許返納によってなくなります。主に以下の経費が必要です。
■免許返納により削減できる費用
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その代わりに、電車やタクシーの代金、駐車場代は必要になりますが、相対的に見ても出費はかなり少なくなります。見落としがちですが、運転免許証の自主返納には経済的なメリットもあるのです。
4.運転しないことで家族や周りの人が安心できる
そして、免許返納は家族にも喜ばれます。自主返納をすると、万が一の事故の可能性がなくなり、家族は高齢者の交通事故への不安から解放されます。同時に、もし自動車事故を起こした時の相手や社会への賠償の可能性もなくなります。
本人も家族も、安心して過ごすことができる喜びがあることも忘れてはいけません。
免許返納してほしい家族の想いと問題
高齢者の免許返納については、自分の意思で返納する方よりも、家族や周囲の説得によって返納するケースが多いことが問題視されています。
免許返納に応じない高齢者の考え
高齢者が自動車運転を続けることに不安を感じている家族は少なくありませんが、返納に踏み切れないケースも意外と多いです。
【免許返納に踏み切れない高齢者の具体例】
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これまでの生活を通じて培ったプライドなどが心の中に存在する方もいらっしゃいます。
大事なのは説得ではなく話し合い
家族とのコミュニケーションが重要です。家族が心配しているからといって、直接的に指示しても、高齢者がスムーズに免許返納するわけではありません。高齢者の運転能力や生活状況を理解し、家族で話し合うことが大切です。家族とのコミュニケーションを通じて、少しずつ本人の意思で返納する方向へ誘導していくことが効果的です。
【通常の会話で取り入れたい主な具体例】
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説得ではなく、普段の会話の中で自動車事故や操作ミスによる事件や事故の存在を話題に出していきましょう。
免許を返納する前にやっておくこと
免許返納後は生活スタイルが変わってしまいます。運転免許証を身分証明代わりに使っている方もいらっしゃいますし、車に乗れなくなるため、移動方法も変わってしまいます。
運転免許証は運転経歴証明書という形で交付が可能で、引き続き身分証明として使用できますが、その他にも注意すべき点が存在します。ここでは免許証の自主返納前にやっておくべきことをまとめてみました。
①所有車の名義変更と処分
免許返納すると、当然ですが自分で車を運転することができなくなります。
現在自分が所有している自動車は事前に処分しておくことをお勧めします。もし家族や友人に車を譲渡する場合は、名義変更を行い、各種手続きを事前に済ませておくことをお勧めします。乗る人がいない場合は、きちんと売却するか廃車にするなど、事前に処分を行っておきましょう。
②自動車保険の解約
自動車保険の解約も行っておきましょう。
免許返納する日時を保険会社と相談しておくことが大切です。余分なお金を払わないように、免許返納後の不要な保険料を支払わないように、解約手続きを行うことをお勧めします。
③生活するための交通手段の確保
意外と見落としがちですが、自動車免許を返納した後の移動手段を事前に調べておくことが大切です。
普段の生活で必要な場所への移動手段は、返納する前に確保しましょう。家族が住んでいる場所、日常の買い物や病院訪問、近所付き合いや寄り合い場所など、振り返ると意外と多いものです。全てタクシーではコストがかかりすぎますし、ひたすら徒歩だと疲れてしまいます。
有効な手段がない場合は、電動自転車などの検討も良いでしょう。普通の自転車とは異なり、電動モーターで運転を補助してくれるため、楽に乗ることができます。免許返納後の交通手段や移動手段をあらかじめ確保しておきましょう。
まとめ 不安を感じた時が免許返納のタイミング
今回は自動車免許の目安年齢と自主返納のメリットと、気をつけたい点を中心にまとめてみました。
年間のニュースに出てくるように、高齢者の自動車事故は故意にスピード違反や違反運転をしているわけではなく、ちょっとした運転ミスや判断ミスから起こっているものがほとんどです。
普段から運転に気をつけていても、不意のアクシデント時のとっさの判断や、高齢になると反応が鈍くなるのは事実です。医学的・身体的な観点からも、自主返納を推奨する流れになっています。移動手段を失うことや、自分はまだ大丈夫と思う気持ちから、「自主返納は必要ない」「したくない」と踏み切れない人が意外と多いですが、自主返納することによるメリットも多くあります。
自主返納によって、日々の生活や交通費用に関するさまざまなサポートを受けられる特典がありますし、何より家族が喜びます。
もちろん本人を信頼していますが、自動車事故は予期せぬ時に発生するものです。自動車運転が大丈夫かという、心の奥底にある不安から解放されるのも大きなメリットです。
現時点で免許返納に踏み切れない方や運転に問題がないと感じても、高齢になったら自主返納の選択を考えてみるのはいかがでしょうか?